導入
ここ数日、道行く人や酒場にたむろする人は、噂でもちきりになっています。 噂というのは“死の呪い”の噂です。死の呪いというのは、かつて死からよみがえったことのある人が例外なくかかってしまうという、消耗性の病気です。感染者は日に日に痩せ衰え、一度逃れたはずの死の淵に、ゆっくりと、しかし確実に引きずりこまれてゆくのです。そして力尽きたが最後、もう誰も彼らを生き返らせることはできません。 しかも、よみがえれなくなったのは彼らだけではありません。かつて復活の奇跡を受けたかどうかに関係なく、もう誰も生き返ることができなくなってしまったのです。寺院も、信仰魔法を研究する学者たちも、国じゅうにはこびる呪いの原因がわからず、途方に暮れています。この呪いはもう国じゅうに広まっています。もしかしたら、すでに国じゅうに広まっています。もしかしたら、すでに世界中に広まっているのかも知れません。
みなさんは一つの屋敷に招待されました。屋敷の主は、元冒険者で、今は商人をしているシンドラ・シルヴェイン。 みなさんはお仕着せを着た召使に案内されて、正面玄関ホールの大階段を上がって、3階の部屋に入りました。部屋には暖炉があって、壁は板張り。座り心地の良さそうな椅子が数脚と、大きくて立派なテーブルが一つ。 テーブルの上にはワインの瓶と杯がいくつか置いてあります。板張りの壁は濃い色の木材でできていて、壁面には地図や海図が何枚も掛けられています。さらに、格子棚や書庫や戸棚には、何百枚もの地図や海図の巻物が詰め込まれています。
暖炉のそばにある一人掛けのソファに、一人の人物が座っています。男か女かはわかりません。椅子全体を覆うようにかけた高い毛布の下から頭だけを出していて、その頭も刺繍をほどこしたフードを被り、顔を銀の仮面で隠しているからです。声すらも、耳障りな、しゃがれた、かすれ声で、手掛かりにはなりません。
「好きな所に座ってください。ワインは手酌でお願いします。よく来てくれました。わが友人たちよ。そう呼ぶことを許してくれますね。」